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綱の誇り、土俵の現実

 来月、東京・両国国技館の土俵上に横綱の姿はみられるのだろうか。

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で3月の春場所より禁止されていた出稽古が今月に入り、解禁となった。来月の本場所に向け、16日より希望者を対象とした合同稽古が両国国技館内の相撲教習所で行われている。16日の初日には横綱・白鵬や新大関・正代、大関・貴景勝ら、19人の力士が参加している。

 稽古の様子を報じる中で、一枚の写真が目に留まった。横綱・白鵬が、先場所後に大関に昇進した正代に胸を出し、讃えて笑顔を浮かべている。

 横綱として、正代に稽古をつけており、写真を見る限りでも「格上・格下」という両者の番付上の関係性が嫌でも感じ取れる。「勢いがあるからこっちも勢いをもらわないと」と、新大関へのコメントも、どこか余裕も含まれているかのようだ。

 ただし、土俵上での星取を数場所、遡り振り返ってみると、決してその地位が盤石でないことは明らかだ。ここ2年間、横綱として優勝4度を記録しているものの、7場所で休場(全休3場所)している。これについては横綱審議委員をはじめ、ファンからも厳しい声が挙がっている。もう一人の横綱、鶴竜とともに「現役力士」としての姿勢が問われるまでになり、反対に白鵬がその声に反論するなど、もはや泥仕合の様相にまで発展してきている。

 新型ウイルス感染が日本国内でも猛威を振るい始めた3月、無観客開催など異様な雰囲気の中で行われた大阪場所を制し、改めて精神力の強靭さを感じさせるなど、土俵上では周囲を納得させる相撲を披露していることは確かだ。ただ、1年の半分の場所を休場する横綱では、その強さも説得力を失つつある。また、ここにきて多くの若手の台頭がみられており、確実に土俵上の顔触れ、そして風景は変わり続けている。「壁」となれないまま最高位に固執し続ける様には、ファンの視線は冷ややかに向けられる。

 8月に手術した右ひざについては「間に合ったという感じ」と語っており、両国国技館で行われる11月場所への出場への期待も高まる中、「怪我からの復帰後は結果を残している」と強気の言葉も。今年最後の場所への出場を決意するのならば、その言葉通り、さらには最高位の責任を果たすべく、土俵上で結果を残さなければならないことは言うまでもない。さらには、横綱の使命の重さは自身の口から発せられた言葉も同様だ。

 無論、かつて語っていた「東京五輪まではやりますよ」などという、自身の進退について軽々しく口にすることはないように願いたい。(佐藤文孝)

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