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総合格闘技、大晦日の華々しさと囁かれる不安

2000年代初め、日本には総合格闘技ブームが訪れていた。プロレスやキックボクシング、レスリング、柔道といった様々なバックボーンを持つ選手たちが同じリング上でぶつかり合い、異様な熱気を生むほどの戦いを繰り広げた。

我々ファンは、その高い技術に魅せられ、選手達への愛着は膨らむ一方であり、会場に足を運び、テレビにくぎ付けとなった。そのブームの象徴となったのが、地上波3局がいわゆるゴールデンタイムで格闘技イベントを生中継するという事態にまでなった2003年の大晦日だろう。紅白歌合戦の「裏」で3つのチャンネルに殴り合い、関節技の応酬が映し出される、異例であり過激な納めの日となった。

ブームとは程遠いとはいえ、現在も総合格闘技「RIZIN」が日本国内のトッププロモーションとして、戦いを提供している。様々な演出は当時の中心イベントだった「PRIDE」から引き継がれており、地上波放送も定期的に行われ、格闘技ファンにとっては欲求を満たしてくれるイベントの一つと言って良いだろう。2015年から大晦日の興行も行われており、リング上のクオリティや生まれる熱は当時には及ばないものの、新たなスターも生まれ、年末の風物詩としての役割が定着した感が強い。

今回のメインイベントとなるであろう一戦が朝倉海vs堀口恭司のバンタム級タイトルマッチだ。昨年、初対戦時には朝倉がノックアウト勝ちをおさめ、大番狂わせを起こしている。そこから、一気にメインイベンターとなった朝倉に対し、挑戦者として挑む堀口。負傷からの復帰戦でもある今回は堀口のリベンジマッチとしての意味合いが強い。そして今や海外からも注目を集める程、圧倒的な強さを誇るまでになったチャンピオン朝倉も貫禄は充分、大晦日を彩るにふさわしい存在であることは確かだ。

久しぶりに高い緊張感に包まれる、日本人実力者同士の楽しみな一戦だ。激しい戦いの末、勝敗という残酷な色分けが行われ、どちらかが全てを手にし、どちらかが全てを失う、試合終了までの一連のストーリーを楽しめるのが総合格闘技、トップファイターによる試合なのだ。

他にも、近い将来でのボクシング転向が囁かれている那須川天心や、先日、総合への参戦を表明したリオ五輪金メダリスト・太田忍など、注目選手が集結する。RIZINとして6度目の大晦日はこれまで以上に華やかなビッグイベントの予感に覆われている。

ただ、ファンの関心は高まる一方で、一部報道ではプロ格闘技のリングには相応しくない名前も伝えられている。また、来月行われるプロ野球トライアウトの結果も気にしてし続けているファンも少なくないだろう。かつて「世界最高峰」と呼ばれるほどのクオリティを生み出した者たちであれば尚更、自らの価値を下げるようなことはあってはならない。本物は本物によって創り出されるのだから。(佐藤文孝)

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アイスホッケーを観に行こう。

「アイスホッケーマガジン 2020-2021 選手名鑑号」を購入した。毎年、冬が訪れる今頃になると書店で見つけ、パラパラと捲った後に、レジへと向かう。

年に一度だけ発刊される、このアイスホッケーマガジンを目にすることで、そのシーズンの氷上の戦いを想像してしまう。

日本国内におけるアイスホッケーという冬季競技は、長らくの間、「冬の時代」から移ることが出来ずにいる。特に2020年、スポーツ界の多くの団体が満足にこれまで通りの活動が出来ずにいる中、アイスホッケー界の国内トップリーグも、まさに特別なシーズンを迎えている。

例年行われてきたアジアリーグの開催がままならず、5つの国内チームによる「ジャパンカップ」を戦うこととなり、10月からシーズンは始まっている。そして、その5つのチームの中には、新規参入のチームもあり、リーグ形式と共に新たに様相を変えたのも今季の大きな特徴だ。

アジアリーグ発足以降では国内5番目となるチーム、横浜グリッツが今季より参入している。これまで、アジアリーグで戦ってきた選手に加え、社会人や大学からの選手で構成されている。新チームというだけでも、その戦いぶりなどが大きな関心を惹くことはもちろんだが、拠点が横浜であることがアイスホッケーファンにとって「好材料」だ。北海道、東北、日光をホームとする4チームに、グリッツが加わる事で、試合観戦に足を運びやすくなったことは言うまでもない。これまではシーズン中、東京での集中シリーズが頼りとなっていた関東などのファンは、定期的にグリッツのホームゲームを通して国内トップの戦いを堪能できる。

新規参入と言えば、例えば2005年、プロ野球の東北楽天やサッカーにおける各リーグへの昇格クラブなどが思い浮かぶが、新参入故、レベルの違いなどの壁に阻まれる結果が殆どだ。横浜グリッツも、11月28日現在の結果では13試合を終え未勝利と、苦しい戦いが続いている。それでも、実績のある4チームに食い下がり、ジャパンカップを舞台に選手たちがプレーを続けること自体が、日本アイスホッケー界の未来に向けても間違いなく大きな意味を持っている。チームには日本代表でもある平野裕志朗も所属し、そのプレーを間近で観られることも楽しみの一つだ。

テレビではもちろん、ネットを通してもゲームを観ることは難しい、アイスホッケー。また昨年、日本代表はオリンピック予選を戦うも敗退、またしても大舞台への切符を逃している。決して、メジャースポーツとは言えず、明るい話題も少ない競技ではあるものの、会場でのプレーの迫力は数えきれないほどの魅力に溢れている。リンクを疾走する選手たちのスピード感、激しくぶつかり合うパワー、スティックやパックを操つるテクニックを味わいに、今季は久しぶりに氷上の戦いを観に行こうと思っている。(佐藤文孝)

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ディエゴ・マラドーナ 人間の形をした「神」 

偉大なる巨星、逝く。

ディエゴ・マラドーナがこの世を去った。

現役時代、メキシコW杯制覇やイタリアセリエAナポリでの活躍はもちろん、プレー自体がもはや伝説的に語り継がれる、唯一無二の存在だった。「神の手」「五人抜き」はまさに「神の業」として、サッカーファンならば知らないものはいない程であり、深く歴史に刻まれている。

選手生活晩年の薬物使用や私生活での様々な醜聞という、「影」もマラドーナという人間を構成する一部ではあったが、グラウンド上でのプレーや、引退後も放ち続けた存在感は光に満ちていた。そして、スーパースターが強烈なインパクトを残したのはやはり、ワールドカップという大舞台だった。

マラドーナが選手として最後の出場となった1994年のアメリカ大会。グループリーグ・ギリシャ戦でのマラドーナのゴールは、スーパースターが放った最後の輝きだったのかもしれない。相手ゴール前で細かいパスの連続から、最後はボールをコントールしたマラドーナが左足でゴールに突刺した。そして、その後のテレビ画面に映し出された、雄叫びを上げる得点者の表情。当時高校2年、17歳だった自分はあのシーンをリアルタイムで観ており、ワールドカップという舞台の華やかさと、引退が囁かれていたマラドーナの現役を目にすることが出来た喜びを、興奮と共に感じていた。

その数日後、禁止薬物の使用が発覚、アメリカ大会から追放となり、最高峰の舞台から自ら降りた、いや、転がり落ちる形となったマラドーナ。アルゼンチンも勝ち進むことが出来ずに敗退、天才を失ったサッカー大国はあまりにも脆く、崩れた。

前年の南米予選では、土壇場の大陸間プレーオフで代表に復帰し、アルゼンチンは辛くも出場権をもぎ取り、本大会でも背番号10がチームを去った途端、ラ・セレシオンはピッチに沈んだ。そしてその事実は皮肉にも、醜聞に包まれていたマラドーナというプレーヤーの偉大さをさらに感じさせることとなる。

2010年南ア大会には監督として母国を率いた。当時の中心だったリオネル・メッシは同じ10番を背負い、後継者としての役割も期待され、マラドーナとのやり取りは特に注目を集めていたことを憶えている。ただ、青と白のユニフォームを纏ったメッシはもう次のW杯への可能性は極めて低く、マラドーナ以降、アルゼンチンに勲章(W杯優勝)はもたらされていない。

選手時代、そしてピッチを離れてもそのカリスマ性は絶大だったサッカーの申し子。アルゼンチンという国名を広く世界に知らしめる存在でもあった、ディエゴ・マラドーナは2020年11月25日、次なるフィールドへと旅立った。(佐藤文孝)

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巨人終戦。王者に怯え、屈辱に塗れた盟主たち。

代打・亀井の打球は高く打ち上がると、そのまま内野手のグラブに収まりゲームセットが告げられる。巨人は第4戦も1対4で敗れ、昨年に続いて日本シリーズでソフトバンクに4連敗を喫した。セ・リーグ二連覇を成し遂げた「球界の盟主」が屈辱に塗れた。

終わってみれば、巨人ファン、そしてセ・リーグ球団関係者でさえも目を覆いたくなるような惨状となった。

初戦の菅野智之が6回4失点でノックアウトされエースで第1戦を落とすと、続く2戦目も先発の今村信貴が2回途中で4失点、6人のリリーフも計9失点で完全に打ち崩されることに。

福岡に移った3戦目、サンチェスが好投するも、打線の援護がなく9回2死までノーヒットノーランを許すなど、全く得点の気配も感じられずに完封負け。もはや、チーム全体から戦う意欲が失われていることが伝わってくるほどの覇気の無い戦いぶりだった。

そして第4戦。シリーズで初めて先制するも、ホークス柳田、甲斐に一発を許し逆転され、先発畠世周は2回持たずにマウンドを降りた。打線も中盤以降は沈黙、反撃の意欲もみせられぬまま、あっけなくこの日も敗れた。

シリーズ前の図式では、ソフトバンクへのリベンジを果たすべく、セ・リーグを2連覇を果たした巨人の「逆襲劇」を期待していた。特に、過去2年連続でのカードは様々なドラマが繰り広げられている。

1992年、93年の西武対ヤクルトのシリーズは球史に残る激闘となり、何よりもヤクルトスワローズの打倒・西武ライオンズへの気迫が凄まじく、選手たちの戦いぶりとシリーズの内容に映し出されていた。92年に敗れていたヤクルトは翌年、ペナントレース前から西武を倒すことを目標としてシーズンを戦い、シリーズでも7戦の末、悲願を達成した。試合内容も劇的な展開の連続となり、2年に跨ってのツバメ軍団の究極のリベンジを果たしている。

今回の巨人というチームからは、昨年の敗戦のなど無かったかの如く、戦いへの意識の薄さ、そして昨年のリベンジという思いがまるで伝わらないプレーぶりだった。セ・パとのルール(DH製やCSの有無等)の違いや戦力差が語られ続けているが、何故か、目指している方向が異なるようにさえ、思えてならなかった。

最後に。

4試合で計5得点という、打線の不甲斐なさが4連敗の明らかな要因ではあった。特に主軸である岡本は、この戦いの中、まるで存在感を示すことが出来ず凡打に仕留められた。セ2冠打者がこのシリーズに記録した安打は、僅か一本のみだった。

さらに、岡本以外でも勝負どころでの覇気の感じられない打者のなんと多かったことか。3、4戦目の試合最終盤、代打で送られたにも拘らず際どいコースにバットを出せずに、三振に切って取られるシーンが繰り返されている。王者ホークスに対し、バッターボックスで怯えている様では、はじめから勝負は決していた。ファンの記憶に残る熱戦も起こりようがない。戦う気持ちを失ったプレーヤーは、日本一を競う資格など無いのだ。(佐藤文孝)

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アルベルト監督、続投。魅力的なサッカーをこれからも。

今なお続く暗闇に、一筋の光明だ。

サッカーJ2アルビレックス新潟がアルベルト監督の来季の続投を発表した。

今シーズン、ここまでの成績が14勝14引き分け7敗の5位。目標としていたJ1昇格圏となる2位との勝ち点差が13まで開いたものの、数字以上の様々な成果をもたらしていただけに、クラブにとって今季、最大の朗報と言えるかもしれない。

折しも、先週、人事に関しての大きな発表が相次いで行われたばかり。新潟というサッカークラブを大きく変えつつあった「先導役」、是永大輔氏、さらには玉乃淳・元GMの今季限りでの退任という、激震が冷めやらぬ中での、久々のホットなニュースだ。所属選手の酒気帯び運転、そしてクラブ対応の不備といった、一連の不祥事から、サポーターにとって最悪のシナリオとも言える、是永、玉乃、アルベルトの「トロイカ体制」の完全崩壊も現実味を帯びていただけに、その一角を成す指揮官の残留はクラブの未来にとって大きな意味を持つ。

また、指揮官の連続交代という不本意なクラブ史にも終止符を打ったことも、サポーターを安堵させる要因の一つだ。2016年から昨年まで、一年、いやワンシーズンを戦い抜いた監督がおらず、毎年の様に交代が繰り返されていた。アルベルト監督契約更新は現在のクラブの方向性が健全であることを意味し、何より、来季も同じ戦い方を継続できることが強みだ。今季、上位から離れずにいることが表すように、リーグでも屈指のポテンシャルを発揮するサッカーを展開している。ボールを保持し、相手に合わせることなく、自らアクションを起こすサッカーは、結果はもとより観ているものの心も揺さぶる魅力を持っている。

繰り広げるサッカーだけでなく、その人柄もサポーターから愛される理由の一つだ。クラブ史上初のスペイン人指揮官であり、バルサ下部組織のダイレクターなど、もはや数えきれない程伝えられてきた経歴も去ることながら、人々を惹きつけるのはアルベルト監督のコメントやユニークなしぐさだ。それらはたとえ、試合やチーム練習の場に足を運べなくとも、メディアを通して充分、感じることが出来る。

確か、今年初めアルベルト監督は来日当初、こんな言葉を残している。

「2年後、皆さん(選手)はJ1に昇格しています。そして私は日本代表監督になっていることでしょう」

まるで魔法使いのようなその予言が現実となるかどうかはまだ分からない。ただ、来年もアルビを率いることで、その可能性は残されたことになることは確かだ。そして、今シーズンもまだ7試合が残されている。楽しみはこれからだ。(佐藤文孝)

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頂上決戦を彩る予告先発の魅力 

2020年、プロ野球日本シリーズ開幕の朝を迎えた。

多くのメディアでもプロ野球日本選手権の情報が溢れかえっている中、ひと際目につくのが両チームの先発投手の名前だ。予告先発で発表されている投手はソフトバンクが千賀滉大、巨人は菅野智之。何れもチームのエースであることは言うまでもない。大物同士の初戦の投げ合いを想像すると、試合前から興奮が高まる。

近年、シーズンはもちろん、日本シリーズでも予告先発が採用されており、2018年からは3年連続で行われている。ただ、既にルールとして制定されているペナントレースとは違い、毎年、シリーズ直前の監督会議の席で話し合われた中で決められている。2013年のシリーズ前、新聞紙上では監督会議でのこんなやり取りが紹介されていた。

「予告先発はどうするんや」「やりましょう。うちは内海です」

出場チームの楽天・星野仙一監督(当時)と巨人・原辰徳監督の言葉。大舞台を前にした会議の中で、重要な項目であるものの、意外と簡単に決まるものだと感じていた。一方で、その短いやり取りから滲み出る、互いの勝負にかけるプライドも読み取れたことも興味深かった。

シリーズでの先発を事前に公表することは、様々な意見があることは確かだ。チームのみならずファンも先発投手を「読む」ことが、それだけで大きな楽しみでもある。これまで幾度となくみられた、予想の裏をかく先発投手を送り込み、対戦相手を撹乱させることも短期決戦ではれっきとした戦術の一つだ。

それでも、試合前からの予告により、ゲーム展開の想像を膨らませることも、何物にも代えがたい魅力を持っている。そして、包み隠さずに公表するで、当の両先発も調整段階から気持ちを込められることが、予想される。無論、今回のような、日本を代表する投手同士ならば尚のこと、好勝負の予感が鳴り止まない。

ソフトバンクの初戦先発の千賀は、これで4年連続のシリーズ開幕マウンド。過去3回は全て白星を手にしており、シーズン中のみならず、日本シリーズでも最も頼りになる存在だ。現役時、シリーズを何度も戦った経験を持つ工藤公康監督からの信頼も揺るがず、4連覇を懸けた今回も初戦をエースに託した。

日本シリーズ3度目の出場の菅野は、初めてとなる一戦目の先発マウンド。今季は新記録となる13連勝を挙げる等、球界を背負う立場として挑む大舞台で先陣を切る。昨年は故障を抱えながら、4戦目の先発を果たすもホークス打線に屈している。今年こそ日本一奪還のために、フル回転での好投が求められる。

プロ野球界の頂上決戦での先発マウンド。夢の舞台に立つ二人の姿を試合前から思い浮かべる「極上の旨味」を感じることが出来る予告先発。それにより伝わる胸躍る期待は、プレーボールの瞬間を待ち遠しくさせる刺激的なスパイスでもあるかもしれない。(佐藤文孝)

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大相撲 翔猿、連日の土俵上での真っ向勝負

11月場所の土俵でもその存在感は絶大だ。

西前頭4枚目の翔猿は日を追うごとに、動きの鋭さに磨きをかけている。

131kgと、大相撲では軽量でありながら、立ち合いからの突き押しで真っ向からぶつかっていく取り口は観ているものの心を揺るがすに充分だ。

新入幕となった九月場所では11勝を挙げ、敢闘賞を受賞する活躍をみせた。そして幕内二場所目の11月場所、上位力士との取り組みが続き既に負け越しが決まっている中でも、要所で見せ場を作っている。特に輝きを放ったのが、9日目の大関・貴景勝だ。前への勢いと回転の速い突きで挑むと同じく押し相撲の大関を向こうに回し、突きの手数で上回ると完全に主導権を自分のものとし、最後ははたき込んで全勝の大関に土を付けている。初対戦となった先場所と変わらない程の、突き押しを序盤から展開しての白星だった。

そして迎えた13日目。この日の取り組みは初顔となる小結・高安。大関経験者であり、三役での勝ち越しを目前としている巨漢を相手だが、怯むことなく真っ向からぶつかっていく。

立ち合いで頭から当たると、やはり両手で相手を押し続ける。受け止める高安は先に引く動きをみせるも、翔猿は崩れずにさらに追い込む。その後、組み合いとなり翔猿が頭をつけると、足元を窺い最初の蹴返しを繰り出す。高安はこらえるも、その後、もう一度放った格闘技のローキックを彷彿とさせる蹴返しで、高安の両手を土俵につかせた。自身より40㎏以上も重い高安に対し、力強さ、スピード、技のキレと、相撲という競技のあらゆる要素を感じさせる見事な取り口での会心の勝利だった。

小兵であるが故、一番を取り切ると力の限りを尽くした素の表情が滲み出る。勝敗に関わらず、取り終えたばかりにみせるjその顔が、なんとも勇ましく精悍さを表している。両眼を見開き、身体全体で呼吸を続けるその表情は、例えるとなると大相撲という物語における主人公のような凛々しさだ。それまでの小兵力士のイメージを大きく覆す、土俵上の翔猿の動きは横綱大関陣の休場が相次いだ今場所を大いに盛り上げており、スター性も兼ね備えるその顔つきは、更なる上位昇進、そして角界を引っ張る立場としての未来さえ想像させる。

今尚続く観客数の制限や、横綱大関の休場が相次ぐなど、明るい話題の少なかった今年の大相撲において、颯爽と動き回り鮮やかな風を土俵上に吹きこませた翔猿。一度の負け越しを喫した程度では、その強靭な精神が揺らぐことはない。残り僅かとなった11月場所でも千秋楽までさらに力強く翔猿の相撲を披露し、多くのファンの心を惹きつける。(佐藤文孝)

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2020日本シリーズ 21日開幕 4連覇かリベンジか

21日よりプロ野球日本シリーズが開幕する。

今シーズンの総決算となるビッグイベントはセ・リーグ覇者の巨人とパ・リーグを制し、クライマックスシリーズ(CS)を勝ち抜いた福岡ソフトバンクホークスによって争われる。

昨年と同じカードとなるが両チームともリーグ優勝を果たした上でのシリーズ出場となり、まさに「頂上決戦」と言えるだろう。セ・リーグでは今季CSが行われなかったこともあり、両チームのここに至るまでのプロセスは若干異なるものの、やはりリーグチャンピオン同士の日本一決定戦は、観るものの気持ちを昂らせる。

2年連続、同じカードでのシリーズは2006年、2007年の中日対日本ハム以来、13年振り。この時は前年度、日本ハムに敗れた中日が2度目の対戦となった2007年にリベンジを成し遂げ、日本一に輝いている。最終戦の「完全試合リレー」で大きな話題となったシリーズとして記憶されている。

やはり今年も興味が惹かれるポイントは、ジャイアンツのリベンジか。昨年、ジャイアンツはホークスに対し4連敗という屈辱的な結果で敗退している。「球界の盟主」が2年連続で同じチームに敗れることは許されない。

もちろん、戦力的な面や、戦い方など、要点はいくつもある中で、特に注目したいのは原監督の采配だ。昨年のシリーズでは、最後まで不調だった打線の大きな組み換えが無かったことなどが目についた。今季もペナントレース終盤は打線が沈みがちで苦戦した印象が強い。ホークスの巨大戦力は投打にわたり今年も充実していることに変わりはないが、2年連続でペナントを勝ち取った原采配でシリーズも下馬評を覆せるか。もはや名将の域にまで達しているといっても過言では無い球界随一の指揮官が、日本一奪還に向けどんな策を打ってくるか、大いに楽しみでもある。

王者でもあるソフトバンクは、CSでリーグ2位の千葉ロッテを降し、シリーズ出場を決めた。シーズンでの相性の悪さなどもあったものの、初戦から連勝しロッテを一蹴、貫禄を見せつけた。

昨年のシリーズには出場の無かった、主軸である柳田悠岐の存在が大きい。ペナントレース最終戦やCSでも本塁打を放っていて好調さを維持し続けている。2年ぶりの出場となる日本シリーズでもその豪快な打撃がみられるならば、ホークスの4連覇は揺るぎないものになるだろう。

両チームを率いる、原、工藤、両監督は現役時代でも幾度となく日本一を争ってきており、指導者となってもシリーズでの経験も豊富だ。昨年の結果も踏まえ、両監督が今年のシリーズでどのような采配を繰り広げるか。選手が躍動する一投一打はもちろんだが、今年は特にベンチワークからも目が離せない。特別なシーズンを締めくくる、後年まで語り継がれるような名勝負を期待したい。(佐藤文孝)

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メキシコ代表、日本サッカーに再び試練を

「日本サッカーを日本化する」

そう語ったのは、かつて日本代表を率いた経験のあるイビツァ・オシムだ。

日本人には欧州や南米の強豪国を真似ることなく、日本人に合ったサッカーを追求するべしという意味だったか。名将ならではの言い回しではあるが、言葉の真意は的を射ている。

日本サッカー界には代々、大柄な体型や驚異的な身体能力を備える選手の存在は稀であり、持ち合わせている俊敏さや器用さを前面に押し出したうえで、戦術を構築していく必要がある。そして、それを突き詰めることで、初めて国際舞台で成果を得ることが出来るという、素人でも極めて理解しやすい「目標設定」だ。

その目標に対して常々モデルとするべきと言われ続けてきたのがメキシコ代表だ。日本人同様、選手の体型に頼ることなく、古くから自国サッカーの特徴を武器とし、世界でもサッカー強国の部類に入る。W杯はこれまで7大会連続出場を果たしており、前回ロシア大会もベスト16に進出している。金メダルを獲得2012年ロンドン五輪では準決勝で日本を圧倒した。

歴代の代表選手でメキシコの象徴的存在として挙げられるのが1990年代、代表のゴールマウスを守ったGKホルヘ・カンポス。確か身長は168㎝と、「規格外」を誇り、鮮やかなコスチュームと目を見張るようなビッグセーブでアメリカW杯において、その名を轟かせている。様々、持ち合わせていた強烈な個性でやはり目が釘付けとなったのがその身長だ。ピッチ上で、最も体格の大きさが重要となるGKというポジションで極めて小柄ながら、その驚異的な身体能力でゴール前に立ちはだかった。メキシコという国のサッカーは選手のサイズにはまるで拘らないという印象が、カンポスというプレーヤーを通じて植え付けられた気がする。

そのメキシコ代表と、日本代表との強化試合が18日に行われる。何れも「アジリティ」という言葉に置き換えられる俊敏さや、テクニックを中心にサッカーを展開する両国。現代の日本サッカーの象徴とも言える存在の久保建英は欠場とのことだが、同じ様に体格に頼らないプレーヤーが数多く揃っている。

国際大会再開後は未だ、無失点を続けていて、好調さが伝えられている中、北中米の雄を相手にどんな戦いを見せられるか。メキシコ同様、W杯の常連国と呼ばれる位置にまで辿り着いたかもしれないが、実績からどちらが格上かは明らか。ロンドン五輪をはじめ、今まで要所で痛い目にあわされてきており、目指すべきスタイルのロールモデルでもある『先輩』に胸を借りる絶好の機会だ。ここらへんで、もう一度目を覚まさせられるような試練を与えられても良いだろう。(佐藤文孝)

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元アルビ戦士、栄光のセレソン入り

「元」アルビレックス新潟のプレーヤーのニュースがまた、聞こえた。

2017年に所属していたブラジル人プレーヤー、チアゴ・ガリャルドがブラジル代表に選出された。31歳にして初選出であり、サッカーの世界でも最高峰の「チーム」であるブラジル代表のメンバー入り。アルビサポーターならずとも、そのニュースには目と耳を傾ける人が多いだろう。

アルビレックスサポーターにとってはその名前を聞くと、いささか複雑な思いが蘇る。クラブ史上初のJ2降格となってしまった2017年時の所属外国人だったこと、さらにはシーズン途中での退団時の「ゴタゴタ」なども未だに忘れずにいるファンも少なくない(また、同時期に所属していたブラジル人選手も、様々な経緯からアルビとの裁判沙汰になったことも輪をかけているかもしれない)。

それでも、かつてのアルビ戦士がカナリア色のユニフォームにまで登り詰めたニュースは純粋に喜ばしいことである。今季はインテルナシオナウに所属し、ブラジル全国選手権で得点ランキング1位の活躍らしい。新潟でも中盤、そして前線に位置する攻撃的なプレーヤーであり、確か背番号10を背負っていた。あのとき、もう少しだけ良い方向に、チームの歯車が噛み合えば……、色々と思い出す。

歴代の所属ブラジル人ではアンデルソン・リマやコルテースなど、「元」セレソンも在籍した。何れも、新潟がJ1を舞台に戦っていた時代であり、それぞれのプレーヤーの入団前からカナリア色のユニフォームを身に纏った経歴を持つ選手の獲得というニュースが伝わると、それだけでサポーターの胸を躍らせた。

また、中盤で攻撃の中心となりクオリティの高さをみせ続けたマルシオ・リシャルデス、現在も鹿島アントラーズで活躍し新潟時代よりボール奪取能力に長けていたレオ・シルバといった、Jリーグでもトップクラスに位置付けられていた選手でも、ブラジル代表に辿り着いていないことなどをみても、そのハードルがいかに高いものであるかを痛感させられたりもした。やはり、サッカー王国、ブラジルの代表という地位は別格なのだ。

今回、ガリャルドは2022年カタールワールドカップ予選のメンバーとして招集されている。王国ブラジルと言えど、厳しい戦いが予想される南米予選突破への戦力として、初代表の31歳のプレーを追いかけてみたい。その先に続く、更なる大舞台に立つことも願いながら。

ただ、やはり「元アルビ」という見方を変えられない自分もいる。今日、アルビレックス新潟はホームでジェフ千葉に0-2で敗れた。遠かった昇格が、さらに離れていった。(佐藤文孝)