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往年の名投手、昭和と現代を語った偉大なる肉声

11月4日夜、最終盤を迎えているセ・リーグ本塁打王のタイトル争い、阪神・大山とヤクルト・村上の直接対決を見届けようと、衛星放送にチャンネルを合わせた。

消化試合であるとはいえ、両チームの先発、藤浪と石川の投げ合いなども見どころとなったこの試合中継だったのだが、試合展開以外での面白さを感じることとなった。

この試合の解説、鈴木啓示の熱のこもった語り口に終始、惹きつけられたのだった。

平成以降の時代では、かつての名投手というよりも、指導者としてその存在が広く知れ渡っているだろう。近鉄バファローズでの熱血指導の指揮官として、さらには、後に米大リーグでも輝きを放った野茂英雄とのいざこざを生んだヒール的存在としても。

もはや、現代の解説者、評論家の中でも高齢となっているはずだが、その声、そして言葉の力強さは、まるで変っていないように聞こえる。外角低めを有効に活用することといった技術面、そして、昨今の名球会への想いなども吐露していた他、藤浪への明らかな叱咤激励はもはや解説の域を越えるほどだ。  

また、重鎮ならでは、現役の頃の練習方法でのエピソードなど「昔話」もちらほら。

「とにかく走り、ボールは下半身で投げる」

「300球の投げ込み、体が覚えるまで」

まさに昭和のプロ野球を生き抜き、彩った名左腕の肉声が放たれていた。話の中には恩師である『西本さん』の名前も二度、聞こえた。

隣に座り、「鈴木節」の聞き手となっていたこの日の実況は冨坂和夫アナ。プレイ一つ一つの正確な描写とともに、視聴者として有難い程、数々の珠玉のエピソードを引き出していた。

ゲームは阪神がリードするも、ヤクルトが2度追いつくという展開となる。シーズン終盤、消化試合とは思えない緊迫した内容となったが、最終回、大山の3週間ぶりの一発が飛び出し、劇的な幕切れでタイガース勝利。シーズンの終わりまで熾烈を極めることとなるであろうタイトル争いの主役の一人がゲームを締めた。

中継の最後にサヨナラ本塁打を浴びたヤクルト捕手・西田の背中が画面に映し出されると、通算317勝を挙げた元投手は語っている。「ピッチャーも悔しいがキャッチャーも悔しい。」「悔しさがなかったらだめ。やられたら、次に悔しさでやり返す気持ちが必要。そうしないとプロで飯が食えない」

振り返った西田の両眼は赤かった。

グラウンド上は白熱し、そして実況ブースからも「極上」を味わうことが出来たこの日の試合中継。改めて、鈴木啓示が偉大であるということが感じられた、甲子園での熱戦だった。(佐藤文孝)

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