カテゴリー
未分類

番付最上位の重圧 大関・貴景勝の11月場所

観客数は先場所までと比べ倍となり、場内の拍手が増えた大相撲11月場所両国国技館。土俵を見つめる視線や館内の賑わいとは裏腹に、5日目にして幕内の取り組み表がさらに淋しさを増している。

新大関の正代が左足首の負傷により、今日から休場すると発表された。本人が多くを語らずとも、その無念さは想像に難くない。

先日より、同じく大関の朝乃山も休場となっており初日から不在の両横綱と共に、番付上位の存在がこれだけ土俵上に現れないのは、どうしても複雑な思いを抱いてしまう。

今場所、上位力士を括る用語である「横綱大関陣」の中で、図らずも最後の砦となったのが東の大関・貴景勝だ。初日から土つかずの5連勝。これまで以上に大関としての力量が問われる展開に、大抵の大相撲ファンは貴景勝が土俵に上がると、勝ちを後押しする念を送るのではないだろうか。

5日目の相手は西前頭2枚目の大栄翔。こちらも3勝1敗、初日から好調であり正代にも土を付けている難敵との取り組みだったが、結びでの一番は立ち合いから突き放しての一方的な相撲で問題にせず、力強い突き出しで今場所五つめの白星を手にした。相手の当たりを受けた後、すぐさま自分の両手を突っ張らせ、突きに回転の速さと重みを加えていった。どちらの格が上であるかが、はっきりとわかる相撲内容だった。

初優勝が2018年の九州場所。それからちょうど2年が経った。ここまで、優勝争いに加わる事はあっても、賜杯を手にしたのは一昨年11月場所の一度きり。以降は大関からの陥落も経験しており、若くして悲壮感さえ漂わせている。そして迎えた今場所の負けが許されない状況は、24歳の大関にとって乗り越えなければならない極めて高い山となって、聳え立つこととなった。

今場所、これからのライバルと目されるのは、この日、北勝富士を豪快に投げ同じく5連勝とした照ノ富士か。こちらも初優勝から怪我に苦しみ、番付を下げ続けながらも這い上がってきた強者だ。今年5月場所では4年ぶりの幕内最高優勝を成し遂げており、今場所は返り三役で、再びその強さを発揮している。

主役が多ければ生み出す熱は高くなるが、舞台の中心が目まぐるしく変わり続けるのも観客は受け容れづらいものがある。番付の最上位に名を刻むものが圧倒的な強さを誇ることがこの世界の常識であるならば、激動となった2020年の大相撲を締め括るのは、一人大関となった貴景勝の重要な役割と言える。そして、この5日目の相撲を見る限りでは、その願いは決して難しいものではないようにも感じられた。(佐藤文孝)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA