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夢への挑戦と苦悩。貴景勝の令和3年、初場所。

若き「横綱予備軍」がもがき、喘いでいる。

令和3年、初めての本場所で綱取りに挑んだ大関・貴景勝が、初日からまさかの4連敗を喫した。

4日目の宝富士戦は、今場所のここまでを象徴するかの様な相撲内容だった。

立ち合いで上体を思い切りぶつけると、両手で突きながら前へ出る。回り込もうとする相手を追いよく見ながら、なおも押し続けようと頭で当たり、体勢を低くした瞬間、右腕を取られながらまわしを掴まれた。上手を握られると、相手の勢いをこらえられず後退、そのまま投げられ前のめりで両手を土俵についた。歓声が送られることのない館内から、ため息が聞こえた気がした。

足は前に出て、突き押しで圧力をかける、貴景勝らしさは出ていたものの、まだ手にしていない白星への焦りが、最後で勢いを鈍らせてしまった。相撲巧者・宝富士は勝ち急いだ大関を冷静に受け止め、攻略した。

黒星が続いた4日間は、持ち前の力強さを出し切れていないのは明らかだ。 

初日、最後で自分が引いてしまった御嶽海戦、相手のはたき込みに対応が出来なかった2日目の大栄翔戦、返り血に染まりながらも相手に気迫で上回られた北勝富士戦、そして4日目の宝富士との取り組みと、いずれも押し込めなくなると、最後は集中が切れたかのように主導権を握られて敗れている。展開は4日間とも同じ流れが繰り返され、勝負所でのあと一押しが出せない。序盤から中盤までは動きは悪くないだけに、綱取りという重圧が、貴景勝の巨体の動きを鈍らせてしまっているようだ。

ここまでの結果で、今場所での綱取りが無くなったことは間違いない。メディアでは「白紙」という声も聞かれるように、複数場所にわたっての成績が求められる横綱への道のりは、これで来場所以降からの仕切り直しとなった。

24歳で挑んだ、相撲界最高位への挑戦。今回はあっけなく、そして脆くも夢破れただろう。だが、貴景勝の長い相撲人生のワンシーンが過ぎ去っただけでしかない。

力士としての最高位に登り詰めるのが簡単ではないことは、多くの相撲ファンは知っている。たとえ、今場所の相撲内容が充分ではなかったとしても、ファンは貴景勝を見放すことはない。そういう視線を浴びながら、これまで多くの力士が成長を遂げてきた。

綱取りという壮大な目標の実現は、土俵に登り続ける限り、その夢は途絶えることはない。貴景勝にとって次の土俵からが「再スタート」となる。勝てば涙で覆われ、敗れたときには大袈裟なほど表情を曇らせる、心の内が表に浮かびやすい若き大関だからこそ、相撲人生での大仕事への一喜一憂をこの先も、見届けたい。(佐藤文孝)

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